【翻訳】持続可能性を求めて:オープンアクセス時代の出版モデル(2023.2.12)
【翻訳】持続可能性を求めて:オープンアクセス時代の出版モデル(2023.2.12)
原文: Seeking Sustainability: Publishing Models for an Open Access Age
by Lisa Janicke Hinchliffe (Apr. 7, 2020)
翻訳:特定非営利活動法人UniBio Press
先週、「持続可能性を求めて:オープンアクセス時代の出版モデル」の基調講演をする機会に恵まれました。このバーチャルイベントは、もともとUKSGの年次大会のプレカンファレンスとして企画されたものですが、多くのイベントと同様、世界的なパンデミックと戦うために中止されました。この記事は、私の発表を再構成したもので、オープンアクセス、ビジネスモデル、そして持続可能性について考える際に私が心に留めている主要なポイントにハイライトを当てています。私のスライドは、私が所属する大学のリポジトリから入手できます。
わたしの多角的な視点
私はこのテーマを様々な観点から見てきました。私は大学図書館での長いキャリアがあり、コミュニティカレッジ、総合大学、そして研究大学で働いてきました。それぞれに財政的な問題がありました。私の経験では、キャンパスコミュニティが必要とするすべてのコンテンツを購入、ライセンス、またはその他の方法で利用可能にすることは全く不可能でした。私はすべての司書職において、テニュアラインの教員を兼任しており、テニュアと昇進への道を歩んできました。現在所属している大学では、教員に対してオープンアクセスの義務付けを行っています。
私は、大学・研究図書館協会(Association of College and Research Libraries)の会長として、同協会の主要雑誌であるCollege and Research Librariesをダイヤモンド・オープンアクセス・モデルに転換し、論文処理料を導入するのではなく、他の収益源から雑誌を購入することを選択しました。かつて、私はResearch Strategiesという雑誌の編集者でした。この雑誌はPergamon Pressが所有し、その後Elsevierに買収されました。私は現在、Library Trendsの編集者をつとめており、この雑誌は私の大学が所有し、ジョンズ・ホプキンス大学出版局から発行され、特集号のみで構成されています。この特集号は2年遅れで私の大学のリポジトリから無料で読むことができます。
その日その日で、私が持つ価値観、責任、優先順位が、これらの役割の間で対立し、わたしの課題となってきました。持続可能な道を見つけるのは簡単なことではありませんが、多くの人が同じような経験をしていると思います。
過去はプロローグ-サブスクリプションとビッグディール
特に、「ビッグディール」の台頭とブダペスト・オープンアクセス・イニシアチブ(Budapest Open Access Initiative)の始まりから 20 年を経た今、オープンアクセス出版の現在のビジネスモデルについての議論に、歴史的なレンズを持ち込むことは非常に有益であると私は考えています。そうです、20 年です!出版界や学術図書館などで働く人々の中には、デジタル配信やオープンアクセスという考え方、出版社のプラットフォームなどがなかった時代を知らない人もいることでしょう。歴史の弧の中では、20年というのはほんのわずかな時間であり、私は歴史の先例について決定論的に考える人間ではありません。しかし、先行するものが次に来るものを導き、形作ることはよくあることなのです。
デジタルでの配信やアクセスが始まる前の時代、図書館は雑誌の印刷物を購読していました。購読を通じて、雑誌の印刷物が購入され、それらはチェックインされ、棚に並べられ、毎年製本所に送られ、ハードカバーにされました。今日のようにオンデマンドでアクセスできる時代には、少なくとも1週間か2週間にわたって、あるいはそれ以上の間、最新の6ヶ月分あるいは12ヶ月分の雑誌が製本のために棚から取り出されて、アクセスできないようにされることはほとんど理解できないでしょう。コレクション構築のためのさまざまな参考ツールは、異なる学問分野や分野、異なるタイプの機関のためのコアで質の高いジャーナルを特定するのに役立ちました。購入の決定を通じて、図書館はいくつかの雑誌のための持続可能性を作り出し、他の雑誌は淘汰されていきました。
デジタル化の進展は、コンテンツへのアクセスの新しいモデルだけでなく、図書館がコンテンツを獲得するための新しいモデルももたらしました。購読はライセンスになり、永久的なアクセス権(維持するために毎年料金を支払わなければならないこともある)を持つ場合もありますが、そうでない場合もあります。さらに、出版社のコンテンツを、例えば、トピック別のサブコレクションなどの割引パッケージにバンドルしたものや、ビッグディールと呼ばれる、すべてのタイトルを対象としたライセンスも登場しました。図書館の雑誌購読を管理してきた購読エージェントは、図書館が、特に大規模な出版社から直接ライセンスを取得するようになったことを目の当たりにしました。
しかし、すべての図書館が、ビッグディールが約束する姿に熱狂していたわけではなく、いくつかの図書館は懸念を表明していましたが、それは少なくとも部分的には事実であることが裏付けられています。北米研究図書館協会(Association of Research Libraries)の学術コミュニケーション室のディレクターであったMary Caseは、協会の図書館長のためのEBSCO Subscription Servicesのエグゼクティブセミナーで、次のように述べました。
「電子環境は出版社に市場シェアと支配力を強化する新たな機会を提供しています。また、図書館のコレクション予算のより大きな割合がより少ない出版社に回された場合、図書館コミュニティは、図書館員が求めたこと、すなわち価格を適正に保つことを実行している出版社の出版物を購読維持することができるでしょうか。図書館が意思決定を局所的な短期的考察に集中することにより、うかつにも長期的なシステム全体の変化を支援する能力を損なうとしたら本当に残念なことです。」
そして、ウィスコンシン大学マディソン校の総合図書館システムの館長であるケネス・フレイザーは、きっぱりとこう言いました。
「学術図書館の館長は、商業出版社とのビッグディールや包括的なライセンス契約にサインしてはなりません。」
それでも、図書館はこれらのライセンス契約にサインしました。そして、図書館の利用者は間違いなく、より多くのタイトルに便利にアクセスできるようになったのです。図書館はまた、教員と学生のニーズに応えるためにテクノロジーを適用することにおいて、キャンパスのリーダーとしての地位を確立し、それによって利益を得ました。あるものには持続可能性がもたらされましたが、他のものにはもたらされなかった、ということをここで再び確認することができます。また、特に重要なのは、ビッグディールとそれに関連するライセンス方式が、今日の多くのオープンアクセスビジネスモデルの基礎となっていることです。
オープンアクセス時代
興味深いことに、図書館が学術文献のライセンスを増やす方向にあり、場合によってはそのためにキャンパスから追加予算の割り当てを受けていたのと同時に、オープンアクセス運動が台頭し、誰も学術文献を読むためにお金を払う必要はないと主張するようになったのです。たとえば、ブダペスト・オープン・アクセス・イニシアチブ(Budapest Open Access Initiative: BOAI)はこう述べています。
「古い伝統と新しい技術が融合し、前例のない公共財を可能にしました。古い伝統とは、科学者や学者が、探究心と知識のために、すすんで自らの研究成果を無償で学術雑誌に発表することです。新しい技術とは、インターネットです。それらが可能にする公共財とは、査読付き学術雑誌の文献を世界規模で電子的に配布し、すべての人がそれに完全に無料で無制限にアクセスできることです。」
宣言は次のように続きます。
「この文献への「オープンアクセス」とは、インターネットそのものへのアクセスを得ること以外の、金銭的、法的、技術的な障壁なしに、すべてのユーザがこれらの論文の全文を読み、ダウンロードし、コピーし、配布し、印刷し、検索し、リンクし、インデックス作成のためにクロールし、ソフトウェアにデータとして渡し、あるいはその他の合法的目的のために使用することを許可する、公共のインターネット上での自由な利用を意味します。複製と配布に対する唯一の制約、そしてこの領域における著作権の唯一の役割は、著者が自分の作品の完全性を管理し、適切な謝意の表明を受け、引用される権利を著者に与えることであるべきです。」
繰り返しになりますが、歴史的な視点は重要だと思います。なぜなら、現代の多くの取り組みが、特にオープンアクセス出版は著者による著作権保持を要求していると主張したり、当時はまだ存在していなかったクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスを効果的に使ったりする際に、この声明や他の声明を引用しているからです。
早送りして今日の様子を眺めてみると、オープンアクセスは、概して、BOAIのビジョンである「人類を共通の知的会話と知識の探求で一体化するための基礎を築く」ことよりも、オープンアクセス論文の出版を運用するビジネスモデルをいかに開発するかという問題として語られることが多くなっています。その過程で、さまざまなタイプのオープンアクセスが提案され、喧々諤々の議論がなされてきました。オープンアクセスは本来、論文の特質であるように思われますが、現在では、ジャーナルという容器や論文の集合体がオープンアクセスであるかどうかにも注目が集まっています。
「オープンアクセス」という用語には標準的な定義がなく、BOAI のような特定の声明がしばしば拠り所として引き合いに出されますが、世界的に採用されているものでもなければ、強制力のあるものでもありません。異なる用語の賛否を論じるために膨大な量のインクが費やされ、この場で多様な見解を詳細に紹介することは不可能です。その代わりに、私のアプローチは、これらの議論を統合し、私が「(一般的に論じられている)オープンアクセス」と呼ぶものを提示することです。これによって、一種の発見的推論とコミュニティ対話が可能になります。
もちろん、オープンアクセス雑誌は、少なくとも部分的にはオープンアクセス論文から派生したものですが、私は、両者を区別することが有用であると考えます。
論文レベルのオープンアクセス
論文レベルでは、さまざまな色、金属、宝石が、異なる種類のオープンアクセス論文を互いに区別するために用いられてきました。ゴールドとグリーンは基本中の基本です。ゴールドのオープンアクセス論文は、オープンアクセスで出版された論文です。オープンに利用できるのは記録のバージョン(version of record)であり(俗に「出版社のPDF」と呼ばれることもあります)、出版社のプラットフォームで公開後すぐに利用可能になります。著者が論文をゴールド・オープンアクセスで出版するためには、通常、論文処理料(APC)を著者か、もしくは著者の代わりに誰かが支払う必要があります。しかし、必ずしもAPCを払わなければならないわけではありません。このような論文には、通常、著者による著作権の保持と、記録のバージョンに付されたCC-BYライセンスが必要ですが、これらの点に関する実践には大きなばらつきがあります。
グリーン・オープンアクセスは、ゴールドよりも定義するのが難しくなります。受理された著者原稿のような、記録のバージョンではない論文のバージョンが、出版社のプラットフォームではなく、別のどこかに掲載されているかもしれません。あるいは、記録のバージョンをオープンに共有することが許可されているにもかかわらず、出版社のプラットフォームではオープンになっていない可能性もあります。これらのいずれもが、著者と出版社との契約に応じて、正式な出版より前に発生することもあれば、同時に発生することもあり、また、正式な出版からしばらく遅れて発生することもあり得ます。 著作権の所有権とCCライセンスの状況も、ゴールドとは異なります。グリーン・オープンアクセスは、論文の記録のバージョンが有料で出版されることが前提であることを認識することが重要です。
最後に、ブロンズ・オープンアクセスに注意する必要があります。これは、オープンアクセスとは別物であり、マーケティングや広報活動だと言う人もいます。ブロンズ・オープンアクセスの論文は、出版社の方針や慣習によって、誰もが自由に読むことができるようになっています。このようなアクセスは、いわばギフトのアクセスであり、支払いや著者契約によって保証されたオープンアクセスではないので、一時的であることもあれば永続的の場合もあります。また、オープンアクセスでなくなることもあり得ます。潜在的な購読者や著者がレビューするためのサンプル論文、ノーベル賞受賞者の論文、歴史的に重要な論文、政治的・社会的に極めて重要な話題などがブロンズ・オープンアクセスになる可能性があります。ブロンズ・オープンアクセスの普及を記録しようとする研究では、通常、購読コンテンツとして出版社のプラットフォームで公開された論文のみが分析されています。COVID-19 を契機として最近開発されたような、補助的なウェブサイトに投稿された論文やポータルサイトに寄稿された論文は、これらの研究では把握されていないため、たとえ驚くほど多くの文献がブロンズ状態であると記録されていても、その推定は、過小に見積もられている可能性が高いと思われます。
ジャーナルレベルのオープンアクセス
ほとんどすべてのジャーナルが、ゴールド、グリーン、ブロンズのいずれかのステータスの論文を持っています。また、多くのジャーナルはこの三つのすべてを持っています。最近では、グリーンとゴールドのカテゴリだけを考えても、オープンアクセス論文をまったく提供していないジャーナルを見つけることはまれです。それでも、ジャーナルがゴールドのオープンアクセス論文出版のオプションを提供していない限り、そのジャーナルは通常、いかなるオープンアクセス状態も持っていないとみなされます。ジャーナルレベルでオープンアクセスを検討する場合、グリーンとブロンズの論文は一般に脇に置かれます。主にAPCの支払いによって行われるゴールド・オープンアクセスの論文を出版するオプションを提供する購読ジャーナルは、ハイブリッド・ジャーナルとして知られています。
ジャーナル内のすべての論文がゴールド・オープンアクセスで出版されている場合のみ、そのジャーナルは異なる呼称を与えられます。完全なオープンアクセスのジャーナルでは、ゴールドとダイヤモンド(プラチナと呼ばれることもある)の二つが最も一般的なカテゴリです。この二つのカテゴリの区別は、論文の状態ではありません。どちらも、論文はゴールド・オープンアクセスです。むしろ、その違いは資金調達モデルにあります。ゴールド・オープンアクセス誌の場合、ビジネスモデルは、著者が、または著者に代わって誰かがAPCを支払うモデルです。ダイヤモンド(プラチナ)・オープンアクセス・ジャーナルは、他の方法で資金を調達しています。
モデルの風景
著者、図書館、機関、資金提供者などに対して、オープンアクセス出版を推進する動機となる義務、政策、その他の触媒は数多く存在しています。機関や政府の政策、資金提供者の要件、およびさまざまな実践団体のガイドラインは、ビジネスモデルとそれが持続可能かどうかについての道筋を開いたり、閉じたり、変更したり、形作ったりしています。さらに、どのような出版社にとって、どのような新しいモデルが検討可能であるかは、その出版社のこれまでの出版慣行やモデル、財務の安定性、そしてビジネス慣行やプロセスの変化に対応できる蓄えがあるかどうかに左右されます。オープンアクセス出版社として起業するには、資金が必要です。また、購読モデルからオープンアクセス出版に移行する場合も同様です。それぞれ、異なる種類の投資やその結果が考えられます。
このことを念頭に置き、オープンアクセス出版のための契約について、市場で見られる一般的なアプローチを検討してみましょう。これまでと同様、ここで紹介するカテゴリは、締結されている特定の契約の複雑さを意図的に抽象化し、法的な名称ではなく、あくまで「一般に論じられているカテゴリ」を表しています。
転換契約
オープンアクセス出版に対する学術機関の主な投資の対象は、転換契約です。The Scholarly Kitchenの別の記事で説明したように、転換契約では、図書館または図書館のグループは、出版社への支払いを継続しますが、ジャーナルを読むための購読ベースの支払いから、オープンアクセス出版のための支払いへとシフトさせていきます。このような契約は、二つの形態のうちの一つをとります。リード・アンド・パブリッシュ(read-and-publish)契約は、読むための支払いと出版に対する支払いを出版社が受け取る契約であり、これらは一つの契約にまとめられています。パブリッシュ・アンド・リード(publish-and-read)契約では、出版社は出版の対価のみを受け取り、追加費用なしで読むこともできます。これらは意味のない違いだと言う人もいますが、私は、特に図書館コンソーシアムにどのような影響を与えるかという点で、戦略的に異なると考えています。最近になって、一部の転換契約には、割引や著者のための学会員資格などのアドオンが含まれていることが分かっています。
転換契約は、ビッグディールの後継であり、図書館と出版社の両方が契約の交渉と実施に膨大な投資を必要とするため、大手の出版社との契約が大多数となっています。さらに、図書館は歴史的に著者の出版プロセスを担うことはなかったので、キャンパスの研究者に新しい手続きとその管理における図書館の役割について周知するという仕事も引き受けなければなりません。著者は、図書館のこの新しい役割に驚くかもしれません。また、自らのワークフローへの介入を歓迎するかもしれませんし、歓迎しないかもしれません。
重要なのは、転換契約は過渡的なモデルであるということです。完全なオープンアクセス出版への持続可能な移行を実現するためのものです。もしそれが成功すれば、転換契約は存在しなくなり、図書館が購読できる新たな購読コンテンツはなくなります。
純粋出版契約(ピュア・パブリッシュ契約)
転換契約は、規模に関係なく、既存の購読誌を持つ出版社にのみ可能です。オープンアクセスのみの出版社にとって、ビッグディールの後継となるのは、純粋出版契約です。純粋出版契約では、教育機関の著者が特定の出版社の完全なオープンアクセス・ジャーナルで出版することができるように、管理し、支払いを行うための契約が結ばれます。この契約は、一定期間に無制限に出版するための一度の支払い、または論文ごとの個別の支払い(おそらく割引あり)という形を取ることができます。転換契約と同様に、出版社は支払いを管理するための新しいアプローチに投資しなければならず、図書館は、教育機関が特定の出版社に支払うオープンアクセスの支払いを調整し、ワークフローと、図書館のこの新しい役割についてキャンパスコミュニティに周知する役割を担うことになります。
オープンアクセス購読(Subscribe to Open)
オープンアクセス購読モデルは、転換契約と同様、購読出版をその基盤としています。しかし、オープンアクセス購読は、オープンアクセス出版に対する支払いへの移行を求めるものではありません。オープンアクセス購読は、集団行動の問題に対処するための相互保証のアプローチです。オープンアクセス購読のもとでは、購読している図書館は、購読を継続することによってのみ、コンテンツへのアクセスを保証されます。しかし、すべての図書館が購読を継続すれば、それらの図書館は自らの機関のユーザのためにコンテンツへのアクセスを確保できるだけでなく、コンテンツは広くオープンに利用できるようになるのです。どちらの場合でも、契約を結んでいる図書館は優先事項であるコンテンツへのアクセスを保証されますが、集団的な影響としてはすべての人のためのアクセスが保証されます。オープンアクセス購読は、本質的に、購読する機関にとってリスクのないオプトインなのです。
オープンアクセス購読は、既存のワークフローに対する影響を最小限に抑えることのできるモデルですが、論文がオープンアクセスで出版されるかどうかについては、著者も著者の所属機関も完全な決定権を持っていません。また、長期的には、このモデルは、図書館がアクセスを失うリスクを冒したくないような、価値の高いコンテンツに最も適していると思われます。価値の低いコンテンツについては、購読せずにアクセスを失うことのリスクがそれほど大きくはないので、このモデルは維持できなくなるかもしれません。
会員制モデル
会員制モデルは、さまざまな出版社、出版物、プロジェクトにおいて持続可能であることが証明されているモデルですが、出版社と会員のコミュニティとの関係を管理するのが複雑であり、専門分野やニッチ分野に興味を持つ人が限られるという性格を有するために、拡張性に限界がある場合があります。パートナーシップ・モデルと呼ばれることもありますが、このアプローチでは、メンバーはオープンアクセスのコンテンツ以上の利益を受け取ることになります。もちろん、それは定義上、誰もが利用できるものです。会員制モデルを追求する出版社の多くは、運営資金をほとんど持たず、会員を獲得して発展させるために資金を投入する必要があるため、当初は助成金で運営されています。Open Library of the Humanities と Stanford Encyclopedia of Philosophy は、それぞれ出版社と出版物が会員制/パートナーシップ・モデルで成功している例となります。
総括すると
これまで述べてきたような話題以外にも、持続可能性の問題は必然的に多くの問題を提起することになります。資金提供者の義務化により、市場はさらにその姿を変えつつあります。たとえば、プランSは、著者がハイブリッド・ジャーナルで出版することを禁じましたが、その後、転換契約を通じて、それらの学術誌がプランに準拠するオプションを提供し、転換契約に対する出版社と図書館の関心を加速させました。これらの契約は、「OA の王冠をいだかせる」ために、一般には大手出版社との間に結ばれており、独立したハイブリッド・ジャーナルは、より大きな出版社と提携しない限り、プランSの著者による投稿先から締め出されることになるかもしれません。これを持続可能なシステムの一形態と見るかどうかは、独立系出版社と大手出版社という立場の違いによって異なるでしょう。
もちろん、プランSのような義務化は、実施、遵守状況の監視、および施行に関する課題も抱えています。私たちは、米国のパブリックアクセス政策など、過去の義務化から、遵守が即座に、また普遍的に行われるわけではないことを知っています。さらに、資金が十分にあり、出版システムがオープンアクセスを既定としている場合でも、著者がオープンアクセス出版を排除していることを示す証拠もあります。著者の中には、機関の義務によって学問の自由が不適切に制限されていると主張し、法廷で救済を求める者もいます。
図書館の観点からは、ビッグディールはもはや持続不可能であると一般的に考えられています。ですから、転換契約や純粋出版契約も同じ運命をたどるのではないかと考えざるを得ません。私の考えでは、そうならないことはありえないように思われます。世界中の図書館員は、読者が読みたがっている購読誌を解約することがどれほど難しいかを知っています。研究者が投稿先として選んだ雑誌で出版するための資金がもはや得られないと研究者に伝えることを考えると、転換契約や純粋出版契約をキャンセルしたり、範囲を制限したりすることは、どれほど困難なことでしょうか。おそらく、転換契約と純粋出版契約の第一ラウンドでは、ビッグディールが当初そうであったように、「過去の支出」に固定された価格が維持されると思いますが、更新の時期が来ても価格が維持されると期待すべきなのでしょうか。学術文献のより多くの部分がオープンになるにつれて、主に雑誌を読むだけであった機関がハイブリッド雑誌の購読を取りやめる可能性が高いことを考え合わせると、論文出版数の多い機関では、更新時に価格が大幅に上昇する可能性が高いように思われます。出版社の観点からこのモデルを持続可能にするためには、そのような値上げが必要になるでしょう。
すべての関係者が持続可能性を求めています。しかし、結局のところ、誰にとっての持続可能性かという問いに戻ってしまうようです。
注:Society for Scholarly PublishingのプログラムディレクターであるMary Beth Barilla氏の素晴らしい働きと、共同主催者のKnowledge Futures Groupのパートナーシップ部長Heather Staines氏の努力により、UKSGプレカンファレンスからオンラインセミナー形式への切り替えが迅速に行われたことを評価したいと思います。私の講演に続いて、IOP PublishingのManaging DirectorであるSteven Hall氏、ACMのDirector of PublicationsであるScott Delman氏、インペリアル・カレッジ・ロンドンのHead of Scholarly Communications Management, Library ServicesのRuth Harrison氏、ロンドン大学のBirkbeck and the Open Library of HumanitiesのMartin Paul Eve氏によるパネル発表とディスカッションが行われました。100名以上の登録者があり、図書館員、出版社、サービスプロバイダなど、さまざまな立場の人がこのセミナーに参加しました。
Lisa Janicke Hinchliffe
Lisa Janicke Hinchliffeは、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の教授/大学図書館の研究・教育専門家育成コーディネータ、情報科学部およびグローバル研究センターの提携教授です。lisahinchliffe.com
(著作権に関する注意書き)
本記事の原文の著作権は、著者が保持しています。著者は、SSP(Society for Scholarly Publishing)に対して、本記事をあらゆる言語で世界中に配布する権利を許諾しています。UniBio Pressは、SSPから許諾を得て、本記事を日本語に翻訳し、本サイトに掲載しています。